コラム

 公開日: 2015-06-07  最終更新日: 2015-06-08

おおらかな発達障害の60代の友人・・・得手不得手を早くから見極めて

周りの人から手間がかかることで有名な友人

私の古くからの友人で、現在60代になる大学教授の男性がいます。

この友人は昔から、周りの人達に手間をかける人でした。
まず、物をよく置き忘れます。
例えば、電車に乗ると、3回に1回は切符がどこかに行ってしまう、海外出張でパスポートを忘れなどなど。

それから、話していても、半分以上とんちんかんなことを聞いていて、何回も説明しないといけないことが多い。
たとえば、偉い先生が
「では、4時にこの場所で待ち合わせしましょう。」と言ったあとで、
「はい、わかりました。で、何時にどこへ行けばよいですか。」と質問したりするなど。
また、彼が急いで話すときに、文章になっていなくて何回も聞き直すことがあります。

しかし、数学に関しては天才的で、実験をする前に、どのような結果になるか、データのすべてがハーモニーのように思い浮かんできて、結果の予想のグラフが書けるそうです。
実際、研究者としては一流です。

仕事としての学会発表や、論文執筆を無難にこなしているのは、理系なので、話の筋が追いやすく記号や公式で理解できるところが多いのだと思います。
本人自身もそのようなことをいってました。

聴覚的認知(理解)障害と読字障害

私が神経心理学の勉強を始めて、発達障害の本を読んでいた時、「あ!」と思い出したのがこの知人でした。

明らかにその特徴が発達障害の特性に似ている。

あるとき、発達障害ではないかと気になって、この友人に聞いてみました。
もちろん本人の幼い時には「発達障害」という概念は認知されておらず、私が何か大変な病気ではないかと聞いたように誤解して、怒っていましたが、私も確かめてみたかったので、食い下がって試しにということで、いくつかの神経心理検査をしてみました。

その結果は予想どおりでした。
この友人は、聴覚的認知(理解)の障害と軽い読字障害、注意力の問題があったのです。

その後、「正直に言うと」と友人が切り出した話では、
「実際、人の話していることを聞いても昔から何を言ってるのかわからないことが多いこと」と
    (映画の筋を追うのがむずかしいそうです。)、
「科学論文は筋道が予測できるのではわかるけれども、普通の文章はあまりよくわからないこと」
    (新聞は読んでいるうちに何を言っているのかこんがらかるそうです。)
を自分でも昔から感じていたということでした。

この友人の発達障害との付き合い方

しかし、現在、結果的に彼は普通に生活をしていて、研究では世界レベルで認められています。

発達障害だけれども、問題なく生活をしている、このポイントは何なのか、考えてみました。
友人が発達障害であったけれども、ここまで成功したのは何か、理由は2つあるとおもいます。

まず、早くから好きなこと、すなわち、「数学」を見つけていて、理系の大学という目標をもっていたこと。
そして、その延長上で、いわゆる数学オタクになれる研究領域の仕事につけたこと。
コツコツと研究することが仕事なので、才能が最大限に活かせる職業に就いたことがラッキーだったと思います。

もう一つは、本当に幸いなるかな、よい友人や人間関係に恵まれていたことでしょうか。

しかし、そのベースに彼のもつおおらかさがあったように思います。

子どもの頃に「発達障害」という概念はまだ認知されておらず、自分の問題を「障害」という枠でとらえなかったことも良いようにはたらいたのかもしれません。

「どうしてだかわからないけれど、僕はよく失敗してしまう」ぐらいのとらえ方で、あまり気にかけず、時に周りの人たちが振り回されて怒ることがあったとしても、冗談のようなあまりの「ドジ」さかげんと本人の朗らかさで、
   「手間はかかるけれども、なにかしら、憎めない奴」
と認識されているようです。
そのため、周りの人たちを
「しゃないなーフォローしてあげんとあかんな」
という気持ちにさせるような、独特のオーラになっていたのかもしれません。

この友人の事例から示唆されること

彼の事例は、発達障害の方がより良く生きるヒントを示唆していると思います。
すなわち、上記したように、

1>自分の得手を活かす領域は何かをはやくからみつけること

2>障害の枠に自分を押し込まず、できないことはできないと自然に受け止めて、おおらかに生活していくこと

の2つでしょうか。

彼は今も元気に楽しく、大学で研究し、学生さん達を指導しているようです。
60代ですが、見た目が大学院生と変わらず、新学期の自分の講義で円卓の教室に出ていったとき、隣の大学院生から
「先生まだ来られないですね。遅いですね」
と声をかけられたりするそうです。
見た目だけでなく、どこか活き活きとしているのでしょね。

首からは、家の鍵やらIDカードやら、大事なものをすべて赤い紐でぶら下げて、
「いいこと思いついたやろう、ははははは。」
と話すちょっと変わっているけれど面白い先生として、学生さん達に人気のようです。

理論を読んで本から学ぶことも多々ありますが、今回の記事のように、実際の事例から学ぶこともまた多くあります。

今日の記事がどなたかの参考になれば幸いです。
             (今日の記事はこの友人の許可を得て掲載しています。)


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