コラム

2015-10-31

エイジングに伴う認知機能の低下と運転・・・認知症と交通事故

認知機能の低下が運転に及ぼす影響

宮崎で車の暴走事故があり、事故を起こした方は認知症を煩われていたことが明らかになりました。
お二人の方が亡くなられ、また今も怪我で治療中の方々がおられることに胸痛む思いです。

私が病院で患者様に接していた時も、神経心理的な認知機能に問題がある方に運転を止めるようにお伝えすることが何回かありました。

例えば、注意機能が落ちると一般的に左側視野に注意がうまく分散されなくなります。
つまり運転していると左に注意が向かず、車の左側をものに当てたり、最悪は車の左側で人身事故を起こすこととなります。

記憶障害で、例えば知識の記憶が落ちているならば、運転標識の意味がわからなくなったり、見当識の問題があれば、今自分がどこを走っているのか、単に場所や位置だけでなく、車道を走っているのか、歩道を走っているのか、順走しているのか、逆走しているのかも判断がつかなくなり、結果的に大きな事故を起こす可能性が高くなります。


運転に関連する神経心理検査による認知機能の評価と法的規制が急務

認知機能に問題があるならば、運転してはいけない...確かに言うは簡単です。

しかし、私の経験から神経心理検査をして、運転に支障がある結果であること、運転は控えたほうがいいことをお伝えしても、なかなか聞いてもらえない場合が多かったです。

車の運転は60年以上しているから、とか、車の運転は得意だからとかいった理由で「私は大丈夫」、とほとんどの方が言われます。

最終的に精神科医の方から言っていただいて、ご家族の方にも止めていただいて、やっと何人かの方が運転をやめられますが、残りの方は事故を起こしてやっと自覚されることが少なからずありました。

医療の側からは強制力がありませんので、いくら問題があることがわかっていても、最終的には本人の意思にまかせるしかなく、歯がゆく思うことが多々あります。

思えば、車が一般に普及し始めたのが、戦後。
そのころに運転を始めた方が現在80代~70代になり、日本は初めて高齢者と運転の問題に直面しているのだと思います。

問題は「年齢」ではなく「認知機能」ですが、認知症でなくとも、年齢とともに認知機能が低下することはあきらかです。
ある程度の年齢以上の方と、若年性認知症やその他の問題で認知機能に問題があると判断される場合は、神経心理検査を必須として、問題が認められれば、法的に規制することが急務かと思います。

「運転をやめる」選択はサクセスフル・エイジングへの一歩

今までできていたことができなくなる、ということの喪失感はご本人にとってはとても寂しいものです。

特に男性にとっての車は本能的に狩りの道具としての馬のようなものであり、また大切にする愛おしい恋人でもあり、運転を取り上げられることの寂しさ、あるいは悲しさは大変なものだと思います。
そのお気持ちはとてもよくわかります。
しかし、だからと言って危ないと指摘されているにもかかわらず、運転を続けて大きな事故をおこしてしまうと、みんなが不幸になってしまいます。

歳とともに体力が落ちるように「運転力」も落ちます。
それを自分でも自覚してしっかりと受け止め、運転免許を返す一歩を頑張って踏み出していただきたいと思います。
これはネガティブなことではなく、ポジティブへの第一歩でもあります。

歳をとること、いわゆるエイジングの結果、できなくなったことをよく見極めて、保持すること、手放すことの取捨選択を上手に自分でコントロールしていくことは、精神的により良い老後、すなわち、サクセスフルエイジングを実現していく一つの有効な方策です。

宮崎の事故は本当に痛ましい事故でした。
亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げ、怪我をされている方々の一日も早いご回復をお祈りいたしております。

それぞれの人が自分の老化の過程を客観的に見つめ、より良い方向を模索する道具として、神経心理学の知見がもっと社会に活かされれなければと改めて感じずにはおられません。

今日の記事がどなたかのご参考になれば幸いです。



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