コラム

2015-03-06

大人にできること

川崎の中学生殺人事件について確定した事実がまだ出ていない段階でこのような文を書くのは気が引けるのですが。なるべくあの事件を意識しないように書こうと思います。

子どもなぜ大人に話をしないのか


たとえば,子どもが殴られて家に帰ってきたとします。親御さんは「どうしたの。だれにやられたの」とたずねます。子どもはさて。ほんとうのことを言うでしょうか。

言わない可能性のほうが高いですね。「転んだ」とか「階段から落ちた」とか。明らかに殴られたあとがあるのに。なぜ子どもは親にほんとうのことを言わないのでしょうか。

仮に子どもが親御さんに「○○くんにやられた」と言ったとします。親御さんはどうしますか?警察に届けたとします。警察はお子さんから話を聞きます。お子さんがやった子の名前を出します。警察はやった子にやったのか聞きます。素直にやったって言うでしょうか。普通言わないですね。同時進行で証拠や証言を集めます。でも有効なものが出てこなかったら,やった子はそのまま帰ります。だって,「この人にやられました」で逮捕できたら恐ろしいことになりますよ。誤認逮捕やえん罪という,途方もない人権侵害の山を築きます。

やった子は帰ってきて,「告げ口しただろう」とまた殴ります。そうなったら,やられた子は,もう一度大人に本当のことを言うでしょうか。言わないですね。だって,ほんとうのことを言ったのに助けてくれなかったから。また殴られたから。そうやって,その子は殴られ続け,大きな事件へと発展してしまう。

相手の親に怒鳴り込みに行くとします。親がまだやった子を叱れる状態なら,叱ってもらって。やった子はその場では「すみません」と言うでしょう。そしてあとから,「告げ口した」とさらに殴られる。今度はさらに厳しく口止めして。殴るのはなかったとしても,今度は無視するとか嫌がらせするとか。違う形での攻撃をされます。その都度やった子を指導するのですが,そのうちやられた子は疲れ切ってしまいます。やはりその子を守ることはできません。

学校で起こったことなら先生に言うのもありますね。では,子どもは先生の指導をきいて殴らなくなると,本気で思うでしょうか。信頼関係ができている先生であればあるかもしれませんが,必ずしもすべての先生ではありません。また,信頼できると思っていた先生であっても,その後の指導がうまくいかなかったら,さらに暴力やいじめがエスカレートします。子どもに限らず人は,一度裏切られたらもう一度信じることができにくいでしょう。そんなリスクをとってまで,大人に言うでしょうか。

つまり,大人に話をして,そして大人側に子どもをきちんと守る体制ができていないのです。子どもはこれをとてもよくわかっています。大人は自分を守れない。そう思っている。

だから,言わないんです。

あなたはなにができますか?


大きな事件があったら,大人は,「大人に言ってくれたら」と言います。では聞きます。子どもが話してくれて,さてあなたは具体的に何ができますか?すぐに答えがある大人はどれだけいるでしょうか。大人が,子どものためにこれだけのことができるよと示してあげなければ,子どもは話をしてくれません。私たち大人は,子どものためにこれだけのことができると,子どもに示してあげたいんです。

ただでさえ思春期は大人に対して不信感を持つ年頃です。ほんとうに信頼してもらえる大人であるためには,心の交流だけでなく,具体的にできることを示すことです。

寄り添うということ


では大人は子どもに何ができるのでしょうか。私は,その子に最後まで「寄り添う」ことだと思います。「寄り添う」とは,ただそばにいるだけではありません。その子といっしょに問題を解決する,問題解決の現場にい続けることです。殴られた子どもを,もう一度殴られないようにかくまうシェルターの役割をする。警察などの機関と連携して,不良集団との離脱を進める(これについては,警察はたくさんの実績があります)。不良集団とは違う居場所をいっしょに捜す。こころの傷をいやす。そういったことが「寄り添う」ということです。寄り添うということについては,こちらをご覧ください。

そんな思いで書きました。ぜひお読みいただけたらと思います。

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