コラム

2016-02-03

ほんとうに親の愛情不足なのか

「親の愛」ってなんでしょうか。よく子どもが非行や不登校になったら「親の愛情が足りないからだ」といわれます。なぜかといえば,非行や不登校の原因に,そういった子どもの自己肯定感の弱さが指摘されます。じゃあなんで弱いのかといえば,幼少期の親の愛情不足だからだといわれます。たしかに,非行や不登校の子どもの自己肯定感の弱さはあります。自己肯定感は親からの愛情がなければ育たない,だから親の愛情不足といえるんだとのロジックですね。最近では「アタッチメント理論(愛着理論)」も引用されて,親の愛情不足論は声をあげています。ここでは,ほんとうに自己肯定感は「親の」愛情でしか育たないのかなどの検討はせずに,ほんとうに親の愛情は不足しているのかについて考えます。

ほんとうに愛情不足?


さて。あらためましてでは非行や不登校の子どもの親は,本当に愛情不足なんでしょうか。私が知る限り,ほとんどの親御さんは子どもに大きな愛情を注いでおられます。自分のこともさておいて,子どものために東奔西走しておられます。子どもは傷ついたら自分も悲しく思います。ごく一部の例外はあるでしょうけど,なんらかの形で,それが社会的には愛情といえなくても,どの親も子どものことを思っているでしょう。それを愛情と呼ぶのなら,どの親も子供を愛しているのです。

親の愛を自覚できない子ども


しかし,親から愛されたと思っていない子がたくさんいるのも事実なんですね。親からの愛情なんて知らない,自分は憎たらしく思われている,自分は親にとっていらない子だと思っている。そういう子がたくさんいます。なんでこんなことになってしまうのでしょうか。

少年院で出会った少年たちは,ほとんどが親から愛されていることを自覚していませんでした。そりゃそうでしょう。顔を見たらガミガミ言われる。時には手を出されることもある。悪く言われることはあってもほめてもらえることはない。それで愛されてるって思えといわれても無理ですよね。親の方としたら,子どもを愛するがためにまともになってほしくてそういうことをするんです。いわば愛情表現。でもね。子どもはやはりどうしてもそうは取れませんよ。思春期特有の「親離れ」欲求も手伝って,親からの愛情は意識できないまま。そんな子どもたちの声を聞いた大人は,「親は子どもを愛していない」と思っちゃうのでしょうね。親の愛情が子どもに伝わっていないんです。

親の愛がわかるとき


そんな少年たちですが,少年院の生活の中で自分が親にしてもらったことを思い出し,また親との楽しい思い出なんかを先生に他の少年に語るにつれ,親はもしかしたら自分を愛してくれていたのかなって,ガミガミ言われるのとかたたかれるのはいやだけど,だからといって親は自分を愛していないとはいえないんじゃないかということに気づくんです。そう気づいた子どもは,やっとそこで親の愛を感じることができるんです。親の愛をわかるってそういうことなんですよね。愛されているときは意外とわからない。これは,非行少年だけでなく,私たちにもあるんじゃないでしょうか。親になって初めて自分の親の気持ちを知る,なんてこと。

親の愛を安直な親批判に使ってほしくない


ですので,非行や不登校になったという結果だけで親の愛が不足しているとはいえないんです。非行も不登校も,その子自身の問題やその子を取り巻く学校や仲間環境などが複雑に絡み合って出てくる現象です。いわば,いくら親がいっぱい子どもを愛しても,その愛をきちんと受け止められていても,その子がひどい環境にいたら,非行も不登校も起こりうるんです。

非行や不登校の子どもの親は愛情不足だというのを聞くと,私はなんだか安直な親批判だなあと思います。誰もそんな安直な親批判によって親御さんを傷つける権利はないはずです。親御さんを傷つけるのではなく,親御さんがまた子どもと向き合えるように癒してはげますような,そんな支援を私はしていきたいと思っています。

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