コラム

2011-03-05

遺産分割協議に不満が・・・、やり直せますか??


 相続税申告後に「私の相続分が少ない。遺産分割をやり直してほしい。」と相続人間でもめることは珍しくありません。
 遺産分割協議書は相続人、つまり多くの場合は親兄弟が判子を押して作った書類ですから「簡単にやり直せる」と思う方が多いのですが、実はこれには大きな「わな」が待ち構えています。

 弁護士さんに「遺産分割をやり直したいのですが」と聞くと、「相続人全員が合意しているのなら出来ます」と答えます。たしかに最高裁判所の判例で遺産分割の合意解除は可能とされています。
 次に司法書士さんに聞いても、相続人さん全員の印鑑証明書が揃うのであれば「登記は直せます」と言います。印鑑証明さえ揃えば登記を直すのは可能です。

 でも弁護士さんも司法書士さんも最後にこう言うはずです。「税金の問題がどうなっているのかは税理士さんに聞いてみて下さいね」と・・・

 それで、税理士さんに聞いてみたところ、答えは「出来ません」です。

相続税法基本通達に以下の規定があります。
「当初の分割により共同相続人に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は遺産分割により取得したものとはならない」
 (相続税基本通達一九の二-八)

 つまり、有効に成立している遺産分割協議により一度相続人に帰属した財産を、分割協議のやり直しにより、再度他の相続人に帰属させる行為は、税務上は遺産分割ではなく、それ以外の原因、つまり譲渡や交換や贈与として課税するということです。

 民法上や登記上は可能なことが、税務上では贈与税や所得税の課税対象となってしまうのです。

 以前に私の所で扱った事例としてこんな事がありました。「数年前に父が亡くなり、兄が父の自宅を貰いました。でも兄夫婦と残された母親との折り合いが悪く、母親の面倒を弟が見る事になったので、自宅の名義を弟に変えて欲しい。」というものでした。年老いたお母さんからの依頼だったのですが、残念ながらこれをそのまま実行するとは出来ませんでした。
 なぜならこれは「自宅を兄から無償で弟の名義へ変更すること」に他なりません。
つまり、税金の世界では贈与税の課税対象となってしまいます。

 一方で、「弟が自宅を貰う代わりに、弟は兄に幾らかの金銭を支払う」とすれば、今度は「譲渡所得税」が課税されます。もし、その時の金額が時価よりも低ければ、差額について「贈与税」が課税される恐れさえ出てきます。

 この案件の場合、たまたま弟が自宅と同じくらいの土地を持っていたために、弟の土地と自宅の土地とを交換し、所得税法58条「交換の特例」を利用することにより、結果としてお母さんの願いを叶えることが出来たのですが、それでも不動産の移転時にかかってくる「登録免許税」や「不動産取得税」などの余分な費用が発生してしまいました。

 このように、遺産分割協議のやり直しは、民法上や登記上では可能でも、税務的には決して簡単なことではありません。税務的に出来ないことは、いくら民法上や登記上可能なことでも実行してはいけないのです。
 遺産分割協議は、資産の将来・家族の将来を考えて、また、出来れば専門家の意見も取り入れながら、十分に相続人全員で納得の行く話し合いをしていきたいものですね。


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