コラム

 公開日: 2016-09-13 

交通事故の基礎知識~過失割合(4)~

前回までのシリーズ(1)~(3)では,過失割合について,概観してみました。

そして,1例として,下記の例を挙げました。

(事例1) 別冊判例タイムズ№38の104図
  当事者      四輪対四輪
  発生場所    通常の四つ角交差点(一方のみに,一時停止の標識あり)
  当事者の動き  A車  一時停止のないほうの道路を走行し,交差点に進入(減速せず)
             B車  一時停止のある交差道路(A車走行車両と交差する道路)を走行し,
                 交差点に進入 
                 交差点の手前で減速はしたが,一時停止はしなかった。
  
  この事例での,過失割合の基本は,A車70:B車30です。

では,これが,同じ事故現場の状況で,当事者が変わった場合は,どうなるのでしょうか。

一般の感覚として「同じ事故現場で,道路交通法の規制も同じだから,変わらないはずだ」とお考えになる方もいるかと思います。

しかし,それは,「誤解」です。
実は,当事者が変わると,過失割合も変わるのです。

具体的には次のとおりです。

(事例2) 別冊判例タイムズ№38の170図
  当事者      単車対四輪
  発生場所    通常の四つ角交差点(一方のみに,一時停止の標識あり)
  当事者の動き  A車  一時停止のないほうの道路を走行し,交差点に進入(減速せず)
             B車  一時停止のある交差道路(A車走行車両と交差する道路)を走行し,
                 交差点に進入 
                 交差点の手前で減速はしたが,一時停止はしなかった。

  この場合は,A車(単車)55:B車(四輪)45となります。

  上記の事例1と比べると,同じ事故態様であっても,単車の場合のほうに15,過失割合が有利に変更されます。

(事例3) 別冊判例タイムズ№38の244図
  当事者      自転車対四輪(または単車,単車でも過失は同じという意味)
  発生場所    通常の四つ角交差点(一方のみに,一時停止の標識あり)
  当事者の動き  A車  一時停止のないほうの道路を走行し,交差点に進入
             B車  一時停止のある交差道路(A車走行車両と交差する道路)を走行し,
                 交差点に進入 

  この場合は,A車(自転車)40:B車(四輪または単車)60となります。

  ただ,事故態様の前提は少し違っていて,自転車の場合は,双方の速度に関係なく,上記割合となります。
  これは,自転車はそもそも,四輪(または単車)より,速度が遅いことが前提となっているためとも理解できます。

  とすると,上記の事例1と比べると,同じ事故態様であっても,自転車の場合のほうが30,事例2と比べても,自転車のほうが15,過失割合が有利に変更されます。

  もっと,言うと,事例2では,対四輪との関係では有利に変更される立場であった単車も,対自転車との関係では不利に過失割合が変更されるということです。

(上記違いの理由)

 一言でいうと,「損害の公平な分担」という損害賠償実務の基本原則によるものです。

 これまでに「過失割合で損害の負担割合を決める」と説明しましたが,これも,「損害の公平な分担」の実現のためです。

 そして,上記違いがあるのは,「(交通)弱者をより保護しよう」という考え方によるものです。
  
 この「弱者」というのは,当事者間の相対的な関係での「弱者」です。

 ですので,「四輪対単車」の事故では,「弱者」であった単車も,「単車対自転車」の事故では,逆の立場となります。

 弱者を保護しようというのは,交通事故においては,弱者のほうにより重大な損害(人身損害を中心に)が発生することが多く,その発生した重大損害はできるだけ回復してあげようという考え方によるものです。

 ただ,このあたりは,道路交通法からすれば,一時停止の規制のあるほうが有利に扱われる場合があるということで,ご納得されない当事者の方も多くいらっしゃることは確かです。
 
 このように,過失割合は,いろいろと難しい判断となります。

 そして,前提として,事故態様が争いとなるケースも多いです。

 相手の保険会社は,自身の契約者に有利な形で過失割合を提示してくることもあると思いますが,ご納得できない場合は,ぜひ,一度,弁護士に相談してみてください。 

この記事を書いたプロ

丹波橋法律事務所 [ホームページ]

弁護士 笠中晴司

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