コラム

 公開日: 2016-10-03 

非常勤裁判官(民事調停官)の任期が終了しました。(3)

(2)から続く。

私が,非常勤裁判官に応募した理由と結果は次のとおりです。

1 常勤裁判官に興味があった。

  そこで,(2)にも書きましたように,「常勤裁判官への架け橋」的な意味として,「非常勤裁判官」を経験したみたいと思いました。
  ただ,少なくとも,現在は,「常勤裁判官」になる道はとりあえず封印することとしました。

  理由は,非常勤裁判官を経験して,裁判所という組織や裁判官という仕事に対しては,とても好印象を持ちましたが,常勤裁判官になるには,弁護士としての仕事を辞めるという大きな決断がいります。
  そのような決断を,現状は,できる状況にはないということです。

2 裁判官から色々なお話を聞きたかった。

  弁護士として,裁判官とお会いするのは,裁判所の中での期日という限られた時間がほとんどです。
  よって,普通に弁護士をしていると,裁判官と,長い時間,話をする機会はほとんどありません。

  しかし,非常勤裁判官になると,週に1日とはいえ,裁判所に勤務し,裁判官とは一応「同僚」的な関係になります。

  ですので,様々な機会でいろいろな話をする機会がありました。

  その中で,裁判官の方の考え方の一端に触れることができたことは,今後の裁判所での手続きに,有益なものとなったと考えています。

3 調停委員さんから色々なお話を聞きたかった。

  (1)で述べたように,私が担当していた「民事調停官」は,調停委員さん2名とともに,調停委員会を構成して,調停事件を担当します。

  調停委員さんについて,少し説明すると,専門的知見を有する民間の方で,裁判所から委嘱を受けて,「調停事件を担当する」という任にあたられています。
  
  具体的にどのような方たちかというと,弁護士,司法書士,不動産鑑定士,医師,税理士,社会保険労務士等の専門家や,保険会社や官庁のOBの方,さらには,大学の先生,民間会社の役員さん等が,それぞれの業界から推薦されてなられるケースが多いです。

  ですので,調停委員になられる方は,各界の知識の宝庫のようなもので,その業界に関する話を聞くには,いわば「うってつけ」の方たちばかりです。

  そのような方たちとお話ができる機会はそうはありませんので,調停という手続きやその他の交流の中で,ぜひ,そのような方たちとお話をしたいというのが願いでした。

  そして,この目的は,非常によく達成できました。

  たとえば,お医者さんからは医学に関する知識を披露いただくとともに,「医学界の実情」的なものもお伺いすることができました。
  また,司法書士さんや不動産鑑定士さんからは,弁護士としても扱うことが多い,不動産に関する知識をご教授いただきまたし。
  さらに,ほとんどすべての方が,私より年長の方であり,人生の先輩としての知見も色々と頂きました。

  それらの知識等は,今後,弁護士として,また,ひとりの人間として,これから進んでいくのに,とても役立つものと確信しています。

  また,失礼な言い方になりましたら申し訳ありませんが,それらの方たちとのつながりも,私の財産になったと考えています。

4 「裁かれる」側ではなく,「裁く」側を経験してみたかった。

  調停とはいえ,判断を求められるケースはあります。
  そういう意味では,日ごろ,当事者の代理人として裁判所から「裁かれる(判断してもらう)」立場から,逆の立場になります。

  これも,非常に勉強になりました。

  ある事件を判断するとした場合,「何を判断の基準(基礎)とするのか」ということが,立場を変えると,非常にハッキリとわかった部分があると思います。

  この点は,間違いなく,今後の弁護士としての立証活動に活きていくと思います。

5 双方の当事者の話を聞いてみたかった。

  弁護士は,「公平な判断をする」というふうに思われる方もいるかもしれませんが,実は,双方の当事者から話を聞くという機会はほとんどありません。

  だいたいのケースは,依頼者である一方当事者からのみ話を聞き,その一方からの話だけで,事件を組み立てていくことになります。

  ですので,事件が動いていく中で,相手方当事者から,全く聞いたことがない話が出てきたりすると,当初の事件の見立てが変わってしまうケースも,実はあり得るのです。

  しかし,調停という手続きでは,双方の話を交替で聞くことができます。

  この経験はおそらく,調停等の手続きくらいしかできないと思います。

  これも,当事者の話を聞くことの「大切さ」,そして,「大変さ」というものを身に染みて感じることとなりました。


以上が,民事調停官を終えた後の私の感想です。

この経験を,今後の弁護士としての活動に大きく活かしていきたいと考えています。

  

  
  

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弁護士 笠中晴司

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