コラム

 公開日: 2017-02-23 

[遺留分の減殺を請求する」って、どんなことですか?

 先日、ある男性(Aさん)から、「遺留分の減殺を請求する」って、どういうことですかという相談を頂きました。
 よく伺ってみますと、自分は、父親(甲さん)の「遺言」で、甲さんが一生懸命に働いて創業したお店(株式会社にしてあり、その持ち株は殆ど甲さんが所有。お店が建っている事業用の土地や建物も甲名義で、他にはめぼしい財産はありません)の自己株式や事業用土地・建物を全部、後継者である私(長男)に譲ると書かれていたので相続したと思っていたのですが、先日他家に嫁でいた妹(長女Bさん)から内容証明郵便が届き「遺留分減殺請求する。」と言ってきたので、どうしたら良いでしょうというお尋ねでした。
 ここで、「遺留分」というのは、「兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)には、遺言をもってしても奪うことが出来ない法律上の権利」のことで、本件の長女Bさんの遺留分は、「法定相続分の1/2×1/2(1/4)」の「個別的遺留分」を有しています(民法1028条)。
 ところが、この遺留分の計算はかなり難しいので、検討してみますと、(1)まず、「遺留分算定の基礎となる財産」として、a)被相続人甲が相続開始の時に有していた財産全体の価格に、b)相続人以外の人に流出している「贈与」も加算し、c)そこから「債務」の全額を差し引きします。そして、この「基礎となる財産額」に上記のBの遺留分の割合を乗じ、d)遺留分権利者Bが「特別受益財産」を得ている時は(期間の制限はありません)その価格を控除して算出します(個別的遺留分額)。e)しかし、これには「相続人の寄与分」は考慮しません(民法1044条)。
 そして、Bの「遺留分の侵害額」は、上記のようにして算出し「た個別的遺留分額」から、f)遺留分権利者Bが相続によって得た財産があればその額を控除し、他方で、g)遺留分権利者Bが負担すべき相続債務は加算して算出します。
 その結果、上記の個別的遺留分額が確保されていない場合には「遺留分の侵害」が発生していることになり、その不足する部分が「侵害額」だと言うことになります。
 そこで、遺留分権利者Bは、遺留分を保全するのに必要な限度で、「遺贈」及び「相続開始前1年間になされた贈与」の減殺を請求することができることになります(最判平成8年11月26日民集50・10・2747同旨・民法1031条)。また、この減殺請求権の効果については、判例によって「形成権」として、物権的効果が遡及的に発生するとしています(最判昭和41年7月14日民集20・6・1183)。
 ただ、このような遺留分減殺権利は、相続人を保護する制度として規定されたものですが、日本の実情では、多数の中小企業の創業者が高齢化してきて、後継者である長男に事業を承継させようとした場合に障害になる可能性が高いと言えます。
 そのような認識が高まって、平成20年5月9日には、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(中小企業経営承継承継円滑化法)が成立しています。そのうち、「遺留分特例制度」は、平成21年3月1日から施行されています。ただ、ここ問題につきましては、さらに検討した上で報告させて頂きたいと思います。
 

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