コラム

 公開日: 2015-06-14 

歴史教科書

今月の文藝春秋は読み所が多く、つい時間をかけてしまいました。
(他にも読まねばならないものだらけなのに)
その中でも佐藤優氏の論考である、
「中国、韓国、ロシアの「歴史教科書」日本はいかに描かれているか」
という記事は、とても勉強になり、考えさせられる点の多いものでした。

私自身も、少なからず歴史を関知する立場にありますが、
歴史は、一種のストーリーですので、人工物です。
だから、書いた人によって様々な歴史が生まれて当然です。
だから世界共通の歴史など、そもそも存在しません。
またそんなものはない方が良いとも思います。
グローバルというなんとなく甘美な響きの言葉に惑わされるものの、
国境線はそもそも平等ではありません。数メートルの国境線のために
無数の命が失われたことを歴史は教えてくれますが、その解釈は様々です。
この国の人間であれば、原爆投下はまともな感覚ではないと思います。
(少なくとも私はそう考えます)
しかし、近隣の国はそうは考えません。ましてや少なからぬアメリカ人は
正しかったと思っています。なぜならこれが戦争を終わらせたからだという理解です。
原爆が落とされたという事実は揺らぐものではありませんが、その解釈でさえ
多様なのです。歴史とはそういったものなのだと思います。
しかし、だからといって、原爆が落とされた年号と、日付だけを暗記して
それでもって歴史を勉強したことになるのかと言われると、そうも思えません。

また、歴史は、書いた人の都合の悪いようには、通常は書きません。
一部、この国の歴史教科書には特殊なものがありますが、
こういったものがあると、後世の歴史家はとても困ると思います。
通常は、書き手の都合の良い歴史が描かれているのに、
明らかに都合の悪いことが書かれていると、
「これでも目一杯都合がいいのだろうか?」
あるいは
「何か外圧でこう書かされたのだろうか?」
と、その記事ができた歴史以外の歴史的背景を考察せざるを得なくなるからです。
これはなかなか面倒な作業です。

この国もそうですが、国家が歴史を作った場合、
それはむしろ外に向けたものです。自分たちはこれこれこういった歴史が
存在するのだから、他国の干渉は無用というものです。これが領土問題にも連なり、
民族問題にも連なりといった具合に、様々な問題に発展します。
その意味で、歴史問題というのは、とりわけ現代では重要な問題です。

現代は教育でどの国も歴史を学びます。これは当然ながら必要なことですが、
どんな歴史を学ぶのかは、永遠の課題です。とりあえず、自国に都合の良い
歴史を学んでから、後から自分でより客観的なものを学ぶのが一般的かと思います。

しかし、佐藤氏の記事を読むと、歴史に対する考え方は、かくも多様であるかと
あらためて、歴史の難しさを思い知ります。例えば、数学や理科なら、
どこの国で学んでも同じ問題なら、同じ答えのはずです。
英語を世界共通語として学ぶならば、それも誰が教えても、習っても、それほど
大きな違いが生じるとは思えません。自国の言語は、自国だけのものですので
独自性があって然るべきです。しかし、歴史は、同じ問題でも、どれが正しいのかが
全く解釈が異なるという点が、魅力でもあり、難しい面があるのです。

佐藤氏が指摘するように、この国の歴史は受験対策用暗記科目です。
私が大学受験の時も、あるいは私が大学受験を指導している時も
そのように習いましたし、私もそう思っている時期がありました。
(今は反省して考えをあらためています)
だから、いまだにあまりその歴史解釈に関心を持つ人が育たない科目になっています。
しかし、もうそんな時代ではなくなっています。偏差値信仰が瓦解し、2030年には
大学をめぐる環境も大きく変化していると予測されるこの時代において、
暗記科目としての歴史は、極めてナンセンスです。
グローバルと言うならば、とりわけ世界史において一つのトピックについて、
日本はこう考えている、他の国はこう考えているという見解を見せるだけでも
良いことです。どれが正しいか、ではなくて、それぞれの国や個人がどう考えるか
という知識を入れる方向に持って行くことが望ましいのではないかと考えられます。



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