コラム

 公開日: 2010-09-24 

法律実務家に必要とされる賢さ


弁護士をはじめとして法律実務家の世界では高学歴は当たり前であり、出身大学がどうであるとかいうのはほとんど問題にされない。今後、多数の合格者が出てくれば就職の際には出身大学である程度の選抜がされるという噂もあるが。

 周りを見ていても、「自分は賢い」と自信を持っている実務家も多く、確かに頭はいいのだろうなと思う。共通一次の模試で京大判定最高Dであり、共通一次で勘でマーカーを塗ったところが当たりまくって二次試験を受けることが出来た私からすれば華々しい私立高校を出ている人も多い。
 ただし、頭がいい=法律実務家としても賢いとはならないのがこの業界である。実務家である以上、実務に役立つ賢さでないといけない。単に頭がいいことと、実務に役立つ賢さは全く別ものである。

 たとえば、反対尋問をする際にも、頭がいい人は次々に頭が展開するので、証人に次々とたたみかけて聞いていくことがあるが、その時に「先々まで考えて」尋問しているか否かで評価が変わってくることになる。単に頭の回転が速くて思いつきを聞いていくのであれば、ただの賢い人である。能力のある法律実務家は、先の展開を読み、不利な答えが出そうなところは敢えて聞かないとか、伏線に伏線を張って罠にかけるとか一つの質問に全て意図があるのである。なんでこれを聞くかということに常に答えが用意されている。頭が単にいい人の反対尋問は、聞かなくてもよいことまで聞いてしまい、かえって墓穴を掘ることもある。ただ、単に頭のいい人は、「俺の頭の良さがわかったか」となっているので、自分が役に立たない実務家であることには気がつかない。

 また、頭のいい人は頭がいいので、ともすれば証人と議論してしまうこともある。頭がいい人からすれば自明のことを証人が理解しないとそれを押し付けようとし、議論や意見の押しつけとなっていることもある。これは尋問ではなくなっている。尋問は事実を聞くものだからである。しかし、頭のいい人は、「証人をやりこめてやった。俺って頭がいい」と思うのである。
 これに対し、能力のある法律実務家は議論することなく、証人が理解していなければ同等の立場から具体例などをあげて質問をして詰めていく。あくまで行っているのは「質問」である。

 さらに、頭がいい人は、「これこれこういうことからするとこういうことになりませんか」と自分の思っていることを頭がいいのでずばっと証人に聞いてしまう。そこで証人がクビをかしげると、「そうでしょう。そうなるんです」なんて言ったりする。
 能力のある実務家は、証人尋問では事実だけを聞くので、そうしたことは準備書面で書いて、尋問の時には自分の手の内を見せない。

 等々。
 ただの賢い人で終わるか、能力のある法律実務家として華開くかは、こうした点を意識的にしているかどうかでも変わってくる。いかに「考えて」いるかであり、単なる表層上の賢さではなく、「考える力」である。
 頭が良すぎる人は回転が速いので、場面場面で違うことをいったりもいる。本人の中では頭の良さに従って行動しているだけなので矛盾はないが、周りからすれば頭はいいけれど矛盾したことをいう信用できない人となる。

 私が修習をした時に、民事裁判教官も、「法律家で切れすぎる人は危険である。」と言っていた。地道に考え、愚直に事件をし、地を這うような地道な事件をこつこつやれる能力がもっとも重要だということである。私のボスが、単に賢い人を「かしこがりバカ」と呼んでいたということは決してない。

この記事を書いたプロ

中隆志法律事務所 [ホームページ]

弁護士 中隆志

京都府京都市中京区二条通河原町西入榎木町95-1 延寿堂第2ビル5階 [地図]
TEL:075-253-6960

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
解決の事例

1、自賠責では後遺症が非該当とされ、損害保険会社から債務不存在(要するに保険会社側から賠償金の支払義務がないことの確認をする為の裁判)訴訟を提起されたが、判決...

弁護士費用について

 マイベストプロを見られた方は、初回相談料を無料にさせていただいております。 ご予約の際にお問い合わせください。 また、当事務所の3名は、全て法テラス(...

プロへのみんなの声

全ての評価・評判を見る>>

 
このプロの紹介記事
中隆志 なかたかし

多重債務や犯罪被害、交通事故被害に苦しむ人々を法律によって救いたい(1/3)

 「法律を知らないがために不利益を被っている人々を守りたい」。インタビューの冒頭、弁護士の中隆志さんは淡々とした口調ながらも熱い思いを語ってくれました。京都市営地下鉄「京都市役所前」駅から歩いて約5分のところに中隆志法律事務所を構える中さん...

中隆志プロに相談してみよう!

京都新聞 マイベストプロ

交通事故、離婚、遺言・相続で適切な対応は中隆志法律事務所へ。

会社名 : 中隆志法律事務所
住所 : 京都府京都市中京区二条通河原町西入榎木町95-1 延寿堂第2ビル5階 [地図]
TEL : 075-253-6960

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

075-253-6960

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

中隆志(なかたかし)

中隆志法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
このプロへのみんなの声

子どもの将来が不安でしたが、かなり安心することが出来ました

 幹線道路に飛び出して高次脳機能障害を負ってしまった息子...

T
  • 40代/女性 
  • 参考になった数(1

このプロへの声をもっと見る

プロのおすすめコラム
小次郎の動画だワン

うまく行くかわからないが、小次郎(二代目)の動画を置いてみた。そのまま画面上で見るための設定ができ...

プロバイダーの一方的サービス取りやめは困るのだ

 このブログもニフティで開設しているのだが、最近、ニフティから突然のサービス取りやめの通知が突然来て困って...

読書日記12月6日

「代官山コールドケース」文芸春秋。佐々木讓。 17年前に被疑者死亡で解決したはずの殺人事件がえん罪で真犯...

師走

 師走に入ったが、経営者にとっては冬期賞与を支払わなければならず(思えば賞与は修習生の時の2年間と、その後...

インフルエンザの予防接種

 今年も受けたのである。 40歳を超えてから、受けないその冬は必ずかかるというジンクスがあるためである。...

コラム一覧を見る

人気のコラムTOP5
スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ