コラム

 公開日: 2010-12-28 

醜状痕と逸失利益


 交通事故によって顔などに傷跡が残ることがある。これを醜状痕という。
 一方、交通事故によりこれ以上治療してもよくならない症状、すなわち後遺症が残ると、その後遺症により将来にわたり働く能力が落ちたとして(これを労働能力喪失率という)、本来であれば得られるはずであった将来の収入を損害として請求できる。たとえば腕を事故により失った場合には、後遺症の等級何級で、労働能力が何%失われたので、これこれの損害が発生したというように計算されるのである。これを逸失利益という。
 また、後遺症があると、そのような後遺症を負ったことに対する精神的苦痛に対して慰謝料が発生することになる。

 ところが、醜状痕の場合、傷跡であるから、労働能力は別段失われていないのではないか、逸失利益はないのではということが問題になるのである。特に男子の場合はこれを認めないで、後遺症慰謝料で調整するということが多い模様である。

 少し前に、男子学生で醜状痕が残っていた事案で、就職に影響が出るということを理由に(もちろん私がそのような主張をし、本人もそう思っていたのであるが)、一部逸失利益を認めてもらった裁判例を取って、事件自体は終了していたので記録も片づけていた。

 そうしたところ、この判決が自保ジャーナルという冊子に掲載されていた。自保ジャーナルという冊子は、かんたんにいえば交通事故の裁判例を掲載する冊子である。過去にも他の事例で掲載されたことはあるのであるが、私も人間なので自分の取った判決がこうした冊子に掲載されると悪い気はしない。

 時々画期的決定や判決も取るのだが、雑誌社などに送るのが面倒でついついそうしないので、隠れたよい判決などが埋もれていたりするが、本当はこうした判決例は出来るだけ雑誌社に送るようにして、共通の知識とすべきなのであろう。

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