コラム

 公開日: 2011-11-07 

食人

 生き残るために人の肉を食べたことによる苦悩を描いた作品としては「ひかりごけ」などが有名である。
 戦国時代には籠城の際、兵糧攻めをされた時に牛馬を殺し、壁土を喰い、それでも食べるものがなくなると死者が出た場合にこれを喰らったという記録があるが、平時に人を食べるという風習はこの日本にはないようである。飢饉の時にそのようなことがされたという記録もある。

 司馬遼太郎の項羽と劉邦を読んでいると、その頃の中国では食人の風習があったようである。劉邦の妻である呂皇后は、劉邦の死後恐怖政治を行い、漢帝国樹立に功があった功臣を殺し、その肉をハムにして、自らも食べて臣下に贈ったという記録があるようである。
 三国志の原典では、劉備玄徳が雪の中を彷徨い、飢えていた時に助けて貰った際、その家では食べるものを差し出せなかった為に、その主は妻を殺してその肉を食べさせて、劉備は命をつないだという逸話が書かれている。劉備も人を食べさせられたことに苦情をいわず、むしろ主の行為に深く感謝したという話である。
 この話は日本人受けしないために、主が大事にしていた盆栽か何かで暖を取ったという話しに変えられているはずである。
 日本では死によって全ての罪が許されるという感覚があり、死んでしまった人の墓を暴いてむち打つというようなことはせず、蘭学者が刑死した罪人の肉体を解剖したときも、罪人が「死によって罪は償われたのになぜ死後まで辱められるのか」と騒いだ記録が残っている。
 中国では、復讐のためや新王朝が成立した時には、仇や前王朝の墓を暴き、死体に鞭をうつということが行われていた。食人の風習も死体に至るまで辱めるというこのような感覚と無縁ではあるまい。

 変死した死体を解剖することに遺族が感情的に抵抗感があるというのも、こうした日本人の感覚と無縁ではないのだろうと思う。生きている間に辛い目にあったのに、死んでからも体が切り刻まれるというのは耐えられないというところである。
 ロシアなどでは死体に遺族に所有権はなく国が自由にすると聞いたことがあるが本当だろうか。

 死の病原体プリオンという本を読んだ時には、食人の風習がある部族で、男性だけが食人出来るので、男性にだけ死体にあったプリオンが体内に入り、狂牛病の牛のようになってしまう場合があるという記載があった(蛋白源が少ないため、食人によってこれを補うというのである)。
 いささかグロテスクな話となってしまったが、私は極限状況になってもそうした行為には及べそうにないし、及んだ日本人は通常は「ひかりごけ」のような苦悩を負うのであろう。
 

この記事を書いたプロ

中隆志法律事務所 [ホームページ]

弁護士 中隆志

京都府京都市中京区二条通河原町西入榎木町95-1 延寿堂第2ビル5階 [地図]
TEL:075-253-6960

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
解決の事例

1、自賠責では後遺症が非該当とされ、損害保険会社から債務不存在(要するに保険会社側から賠償金の支払義務がないことの確認をする為の裁判)訴訟を提起されたが、判決...

弁護士費用について

 マイベストプロを見られた方は、初回相談料を無料にさせていただいております。 ご予約の際にお問い合わせください。 また、当事務所の3名は、全て法テラス(...

プロへのみんなの声

全ての評価・評判を見る>>

 
このプロの紹介記事
中隆志 なかたかし

多重債務や犯罪被害、交通事故被害に苦しむ人々を法律によって救いたい(1/3)

 「法律を知らないがために不利益を被っている人々を守りたい」。インタビューの冒頭、弁護士の中隆志さんは淡々とした口調ながらも熱い思いを語ってくれました。京都市営地下鉄「京都市役所前」駅から歩いて約5分のところに中隆志法律事務所を構える中さん...

中隆志プロに相談してみよう!

京都新聞 マイベストプロ

交通事故、離婚、遺言・相続で適切な対応は中隆志法律事務所へ。

会社名 : 中隆志法律事務所
住所 : 京都府京都市中京区二条通河原町西入榎木町95-1 延寿堂第2ビル5階 [地図]
TEL : 075-253-6960

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

075-253-6960

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

中隆志(なかたかし)

中隆志法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
このプロへのみんなの声

自分一人では、離婚出来なかったと思います

 妻との離婚の協議が全く前に進まないため、知人に紹介され...

Y
  • 50代/男性 
  • 参考になった数(1

このプロへの声をもっと見る

プロのおすすめコラム
万年筆考

 万年筆が好きで仕事で使っている。字はとてつもなくヘタだが。 日常使う万年筆は、スーツの胸ポケットにメモ...

読書日記「絶滅危惧種ビジネス」

 原書房。エミリー・ボイト。 量産される高級観賞魚・アロワナの闇という副題である。 アロワナは絶滅危...

老化

 年男であるが、最近老化を感じるようになっている。 美容師さんが年齢を見る時には首を見るらしいが(首の...

読書日記「兼好法師」

 中央公論新社。小川剛生。 現在知られている兼好法師の経歴は後生にねつ造されたものだとして、当時の資料か...

天井を見つめているワン
イメージ

 天井を見つめている2代目小次郎である。 たまに虫が飛んでいたりすると追いかけているので、虫を探してい...

コラム一覧を見る

人気のコラムTOP5
スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ