コラム

 公開日: 2015-01-26  最終更新日: 2015-01-27

「持分なし医療法人」への移行をご存知ですか?

ある日の賀茂川

 「持分あり医療法人」とは,出資者が出資した割合に応じてその法人の資産を払い戻すことができる法人を言います。制度上,出資者自身のみならず,出資者の死亡により相続を受けた相続人に払い戻しを請求される可能性があります。しかし,急に払い戻しを請求されてしまうと,経営の継続を危ぶまれる状況に陥ることになるかもしれません。
 「持分なし医療法人」に移行するとその心配はなくなります。持分なし医療法人への移行計画の認定制度は全国の医療法人が,住民に対して継続して安定した医療を提供し続けていくために法律に位置づけられました。
 移行計画の実施期間は,平成26年10月1日から平成29年9月30日までの3年間で,税制優遇措置や低利の融資等を受けることができます。
 今回は,その「持分なし医療法人への移行」に関して,簡単に税制措置や手続きについてご紹介します。

*税制措置の概要
【納税猶予】
 相続人が持分あり医療法人の持分を,相続または遺贈により取得した場合に,その医療法人が移行計画の認定を受けた法人であるときは,移行計画の期間満了(移行計画の認定の日から3年以内)まで相続税の納税が猶予されます。
 また,認定制度の期間内(平成26年10月1日〜平成29年9月30日)であれば,相続後に相続税の申告期限(10ヶ月)までに移行計画の認定をうけ,納税猶予の手続きを行うことで,税制措置を受けることができます。
【猶予税額免除】
 移行計画の認定を受けた医療法人の出資者が持分を放棄したことにより,他の出資者の持分が増加することで,贈与を受けたものとして他の出資者に贈与税が課される場合には,その放棄により受けた贈与税額については,移行計画の期間満了までその納税が猶予され,当該他の出資者が持ち分のすべてを放棄した場合は,猶予税額が免除されます。
 ただし,相続税法第66条第4項の規定に該当するときは,贈与税が課される場合がありますので注意してください。

*手続きの流れ
 「持分なし医療法人」へ移行するには,まず社員総会で議決を得る必要があります。社員総会で出資者の皆さんに充分に説明・理解をしていただくことがとても重要です。
 移行が決定したら,申請にあたっての必要書類を揃えて厚生労働省の大臣宛に移行計画の申請を行います。
 厚生労働省による移行計画の認定を受けたら,その旨を記載した定款変更を都道府県へ申請します。
 都道府県による定款変更の認可がおりたら,移行にむけて具体的に出資者の持分放棄の手続きや持分の払い戻しがある場合等の対応を行います。
 社員総会で「持分なし医療法人」への定款変更について議決すると,持分なし医療法人への移行についての定款変更を都道府県へ申請します。
 都道府県による認可がおりたら,「持分なし医療法人」への移行が完了します。 
 その後,移行が完了したことを厚生労働省へ報告してすべての手続きが終わります。



 「持分なし医療法人」への移行期間は3年間と限られていますが,しっかりと事前準備を行い,無理のない移行計画のスケジュールをたてることで,スムーズに移行を行うことができます。
 詳しくは,当事務所までお気軽にご相談下さいませ。
(文:本間由起子 写真:幸木美月)

*補足
◎出資持分とは
 出資持分とは,出資者が当該医療法人の資産に対し,出資額に応じて経済的な価値を有する財産権をいいます。
 具体的には出資の割合に応じて,利益の配当を受けたり,解散時に残余財産の分配を受けたり,出資の払い戻しを受けたりできる権利が認められることです。

◎持分あり医療法人について
 医療法人には「社団」と「財団」がありますが,そのほとんどが社団たる医療法人です。
 平成19年施行の第5次医療法改正により,現在は,新たに医療法人(社団の場合)を設立するさいには,「持ち分あり医療法人」の設立が認められなくなりました。これにより同改正以降に設立する医療法人は出資持ち分の払い戻しや,解散に伴う残余財産の分配ができなくなりました。
 すなわち,今回の「持ち分なし医療法人への移行」は,あくまで平成19年施行前に設立された「持ち分あり医療法人」を対象としています。



当事務所では医療法人の設立や運営に関する業務を行っております

厚生労働省医政局医療経営支援課「『持分なし医療法人』への移行移行に関する手引書」平成26年9月発行

この記事を書いたプロ

行政書士 四条烏丸法務事務所 [ホームページ]

行政書士 田島充

京都府京都市下京区室町通綾小路上る鶏鉾町480番地 オフィス-ワン四条烏丸8階 [地図]
TEL:075-741-8178

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

6

こちらの関連するコラムもお読みください。

次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
サービス・商品
四条烏丸法務事務所・東京ミーティングルームがある東京銀行協会ビル

このたび、当事務所の東京ミーティングルームを東京銀行協会ビル(東京駅丸の内北口すぐ)に開設しました。東京での打ち合わせ・面談はこちらで対応いたします(要予約...

 
このプロの紹介記事
四条烏丸法律事務所の代表、行政書士の田島充さん

医療法人設立から身近な悩みまで 法と行政サービスで解決します(1/3)

 阪急電鉄・烏丸駅すぐ近くに拠点を構える行政書士 四条烏丸法務事務所。その代表、田島充さんは日々さまざまな依頼に対応していますが、中でも医療法人設立に関してはその手腕をさらに発揮しています。「医療法人設立のメリットは、医師自身の財産と法人...

田島充プロに相談してみよう!

京都新聞 マイベストプロ

総合的・多角的な法務サービスを提供します!

事務所名 : 行政書士 四条烏丸法務事務所
住所 : 京都府京都市下京区室町通綾小路上る鶏鉾町480番地 オフィス-ワン四条烏丸8階 [地図]
TEL : 075-741-8178

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

075-741-8178

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

田島充(たじまみつる)

行政書士 四条烏丸法務事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
ダイヤモンドに光をあてる
ダイヤモンドに光をあてる

 弁護人は、ダイヤモンドのすべての面がよくみえるように、光の下でこれをゆっくりとまわして見せる宝石商ではあ...

[ 司法と行政 ]

「貸座敷」京都
日本辺界略図

 まだ学生の頃、ときどき道端を掃除している姿を見かけるお婆さんに会釈すると、「お国はどちらですか?」と尋...

[ 雑感 ]

目標の方角に斃(たお)れよ
目標の方角に斃(たお)れよ

 坂本龍馬(竜馬)が設立し、のちに「海援隊」に発展した「亀山社中」という組織があります。       ...

[ 医療法人 ]

司法サービスだけでは足りない
司法サービスだけでは足りない

 たとえば、いまここにサラ金など多重債務で苦しむ人がいて、その人を救済することを考えましょう。 一般的に...

[ 司法と行政 ]

債権を、そろえる!
債権を、そろえる!

 前回のコラムで述べましたように、自治体の債権(料金等)には、性質の異なる様々なものがあります。そのため、...

[ 自治体法務 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ