コラム

 公開日: 2011-12-16  最終更新日: 2014-07-03

目標の方角に斃(たお)れよ

目標の方角に斃(たお)れよ

 坂本龍馬(竜馬)が設立し、のちに「海援隊」に発展した「亀山社中」という組織があります。

                    ------------------------------------------
「とにかくゆくゆくは亀山社中が百万石程度の藩の実力をつけねばならぬ。それをもって薩長を主導しつつ幕府を倒して新国家を樹立するのだ」
 さらに竜馬は「幕府を倒して政府ができてもみなは役人になるな。一方では海軍を興し、一方ではこの亀山社中を世界一の商社にする、そのつもりでやれ。もっとも倒幕活動や倒幕戦をやるうちに諸君のほとんどは傷ついたり死んだりするだろう。業なかばでたおれてもよい。そのときは目標の方角にむかい、その姿勢で斃(たお)れよ」といった。みな感奮した。
(司馬遼太郎「竜馬がゆく(六)」文春文庫 177頁)
                   -------------------------------------------

 さて、商法学者の奥島孝康氏は、自分の好きな一節として上記を引用し、竜馬(龍馬)が亀山社中を株式会社の組織原理にもとづいて設立する明確な意図を持っていたことを指摘しています[1]。

 「会社」という言葉は、福沢諭吉が造語したイギリスの「カンパニー」の訳語ですが、その「company」の語源といえば、ラテン語のcum(クム)とpanis(パニス)にあり「共に(cum)パン(panis)を食べる」という意味とされています。つまり共同で事業を起こすために、一緒に食事をする同志的団体を指すことから起った言葉だそうで、共同事業形態の組織であることが特色です[2]。同じく株式会社を意味するものとしてアメリカではコーポレーション(corporation)が用いられています。こちらは人格ないし団体を意味するラテン語のコルプスを語源とし、次第に法人を意味するものに転化しましたが、その含意は「永続的承継」(perpetual succession パーペチュアル・サクセッション)であり、「永遠の生命を持つ人」なのです。[3]

 つまり、竜馬が語った亀山社中の経営方針には、「同志的団体」と、その同志の屍を乗り越えても事業が継続されるという「永遠の生命」が読み取れるのです。

 同じことは医療法人についてもいえます。
 医療法人には、大きく分けると株式会社と同じく「社団」である法人と、これとは若干異なる「財団」である法人があります[4]。前者は同じ志を持った者が(必ずしも医師でなくとも良い)「社員」となって法人を構成しますので「同志的団体」です。後者については人の結合ではなく財産が主体となりますので「同志的団体」とはいえませんが、いずれにしても両者ともに「永続的承継」が認められています。つまり、どんな名医でもいつかは生命が尽きてしまいますが、医療法人になることで「永遠の生命を持つ人」として継続して医療を提供できる体制が可能となるのです。

 そして、株式会社との違いをいえば、ある事業者が個人商店のままでいるか株式会社形態を用いるかは、極端にいえばその事業者のみの問題であって、一般市民が関知するところではありません。しかしながら、医業者が個人診療所として医療を行うか、医療法人として医療活動を行うのかは、継続して医療を提供できる体制が整えられるかどうかという点で、医療の受け手である一般市民の利益に大きくかかわります。実はこの点が最大のポイントとなって医療法人を取り巻く法制度(税制を含む)が設計されているといえるのです。


[1]奥島孝康・プレップ商法〔第2版〕(弘文堂、1991年)7頁
[2]前掲・プレップ商法14頁、奥島孝康・会社法の基礎―事件に学ぶ会社法入門(日本評論社、1994年)5頁 など
[3]前掲・会社法の基礎―事件に学ぶ会社法入門 6頁
[4]医療法39条2項,1項

【2012.3.15 追記】このたびホームページをリニューアルいたしました。どうぞご覧下さい。
 http://www.office-shijo.jp/

この記事を書いたプロ

行政書士 四条烏丸法務事務所 [ホームページ]

行政書士 田島充

京都府京都市下京区室町通綾小路上る鶏鉾町480番地 オフィス-ワン四条烏丸8階 [地図]
TEL:075-741-8178

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

13

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム
最近投稿されたコラムを読む
サービス・商品
四条烏丸法務事務所・東京ミーティングルームがある東京銀行協会ビル

このたび、当事務所の東京ミーティングルームを東京銀行協会ビル(東京駅丸の内北口すぐ)に開設しました。東京での打ち合わせ・面談はこちらで対応いたします(要予約...

 
このプロの紹介記事
四条烏丸法律事務所の代表、行政書士の田島充さん

医療法人設立から身近な悩みまで 法と行政サービスで解決します(1/3)

 阪急電鉄・烏丸駅すぐ近くに拠点を構える行政書士 四条烏丸法務事務所。その代表、田島充さんは日々さまざまな依頼に対応していますが、中でも医療法人設立に関してはその手腕をさらに発揮しています。「医療法人設立のメリットは、医師自身の財産と法人...

田島充プロに相談してみよう!

京都新聞 マイベストプロ

総合的・多角的な法務サービスを提供します!

事務所名 : 行政書士 四条烏丸法務事務所
住所 : 京都府京都市下京区室町通綾小路上る鶏鉾町480番地 オフィス-ワン四条烏丸8階 [地図]
TEL : 075-741-8178

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

075-741-8178

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

田島充(たじまみつる)

行政書士 四条烏丸法務事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
「持分なし医療法人」への移行をご存知ですか?
イメージ

 「持分あり医療法人」とは,出資者が出資した割合に応じてその法人の資産を払い戻すことができる法人を言い...

[ 医療法人 ]

ダイヤモンドに光をあてる
ダイヤモンドに光をあてる

 弁護人は、ダイヤモンドのすべての面がよくみえるように、光の下でこれをゆっくりとまわして見せる宝石商ではあ...

[ 司法と行政 ]

「貸座敷」京都
日本辺界略図

 まだ学生の頃、ときどき道端を掃除している姿を見かけるお婆さんに会釈すると、「お国はどちらですか?」と尋...

[ 雑感 ]

司法サービスだけでは足りない
司法サービスだけでは足りない

 たとえば、いまここにサラ金など多重債務で苦しむ人がいて、その人を救済することを考えましょう。 一般的に...

[ 司法と行政 ]

債権を、そろえる!
債権を、そろえる!

 前回のコラムで述べましたように、自治体の債権(料金等)には、性質の異なる様々なものがあります。そのため、...

[ 自治体法務 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ