コラム

 公開日: 2017-02-17 

医院開業までにやるべき準備とそのタイミング

私はコンサルタントの役目というのは、「クライアントが頭の中に描いたことをバランスを取りながら具現化すること」だと考えています。

そうした目線で、医院開業の準備を見た場合、まずは「どうして医院を開業しようと思ったのか」「どのような場所で、どのような人員配置で、どのような機器を導入して、どのような患者さんに対して、どのような診療を行う」医院やクリニックを作りたいのかという具体的なコンセプトを立てることをお勧めしています。

それらを元に、およそ開業まで1年から2年のスケジュール、事業計画書を作成し、「物件探し」や「設計プラン作成」、「資金準備計画の作成」などを始めますが、この時、まずは、ご家族の理解、協力が得られることが大前提となります。特に、ご親族で既に開業されていらっしゃる場合など、その方とのご関係から、開業場所の選定や、診療科目など、計画の根幹に関わる内容を検討する必要がありますし、ご自宅として併用される場合など、ご家族のご意見も当然取り入れてゆかねばなりません。

また、開業半年前を過ぎると、テナントビル等の賃借の場合は、機器の決定や内装工事の開始、電子カルテなどのシステムの決定、診療科目や診察時間、院内処方薬の決定、スタッフの募集から採用、行政手続きとさまざまな事柄を決断しなければなりません。そうした時に、コンセプトを共有しつつ、第三者の目として資金計画とのバランスを取った適切なお力添えを行うのが私たちの役割です。

私が医院開業コンサルタントとなるまで

まず、少し私自身の仕事をご説明するところから始めさせて頂きます。

大正15年創業(2017年で創業91年目を迎えます)、総合建築設計・請負業を行う「大西建設工業株式会社」の取締役であり、管理建築士・一級建築士として経営に携わっております。他にもデザイン事務所ラウンドアバウトの代表、北山杉を使った製品開発を手掛けるNPO木の町づくり協議会の代表理事であり、また京都情報大学院大学の准教授として、アントレプレナーシップやビジネスプレゼンテーションを指導しております。
私の業務の主たるものはコンサルタントと呼ばれるものですが、その中には建築などデザインに関わるものから、経営や運営に関わるものまでさまざまです。

しかし、私は「建築であれ、経営であれ『形(かたち)にする』という意味では同じことであり、その過程の中で、コンサルタントが行うことは変わらないのではないか」という思いを常に持って、ご相談いただいた仕事に全力を尽くしてきました。
そうして、今では医院開業のコンサルタントも行うようになったのです。

医院開業を準備する上で大切なこと

さて先ほど、私は「建築であれ、経営であれ…、その過程の中でコンサルタントが行うことは変わらない…」と書きました。
では、具体的にコンサルタントの役割とは、どのようなものなのか? 

私はそれを「クライアントが頭の中に描いたことをバランスを取りながら具現化すること」だと考えています。では、そうしたことを念頭においていただくと共に、今このコラムをお読みの方が、私のクライアントであると仮定し、医院開業の準備をする上で大切なことをお話ししていきたいと思います。

まず「頭の中に描いたことを具現化する」ためには、先生方に、開業される医院やクリニックのイメージをお持ち頂き、私どもに、それを言葉や画像などの資料でお話しお伝え頂くことから始まります。

「イメージ」というと、漠然とした印象を抱きがちなので、ここでは「コンセプト」という言葉を使うことにしましょう。
つまり「どうして医院を開業するのか」という思いの部分から「どのような場所で、どのような人員配置で、どのような患者さんに対して、どのような診療を行う医院やクリニックを作りたいのか」という具体的な部分までをしっかりお考え頂くことです。
もちろん、そういったコンセプトワークからお手伝いさせて頂くこともありますし、先生方で明確にお持ちの場合もあります。それらを元に、開業までのスケジュールや事業計画書を作成してゆく流れとなります。

同時に、コンセプトに従って、建築の概要やボリューム(面積や容積)の打合せが始まり、またテナント賃貸借の場合は、コンセプトに見合った物件を探し始めることになり、いよいよ開業への準備がスタートします。

ただ、ここで大事なことは、計画当初に、ご家族から出た意見は、しっかりと記憶や記録に留めて、反映できるよう工夫を凝らすことです。

開業には当然大きな資金が必要になり、これまでの勤務医や研究者としての生活スタイルが大きく変わります。また、事業が波にのるまでは収入も不安定になりがちです。
計画当初のご家族の要望を我慢して頂く部分もあるでしょうし、開業してから、ご家族のどなたかに少なからず何らかの業務を担って頂くことで、費用を抑えることができるかもしれません。そのため、ご家族の皆さんの理解と協力が、開業の準備をする上での大きなステップだと言えるのです。

開業半年前からは様々な「決断」が必要になる

準備作業が進むにつれて、先生方の頭の中に思い描かれたものを次々と選択肢としてご提示させて頂く事が増えてきます。その中で、先生方にお願いをするのは、それらを、しっかりとコンセプトを見極めた上で採用するかどうかを決める「決断」です。

以下に、それぞれの一般的な「決断」のタイミングを列挙してみますので、現在のお仕事を続けながら、同時並行して様々な打合せが進む様子を、イメージしながら読んでみて下さい。
(最も重要な指導を受けられた教授や先生、また医師会等への挨拶・連絡は、今後詳しくお伝えするので、ここでは省略しています)

開業半年前

テナントで開業される際は、物件売買の回転が早く、流通量も豊富で、比較検討の要素が多いため、物件を決めるまでに時間がかかる可能性があります。

しかし、ご自身で想定されている開業時期の半年前になると、探し始めたクリニックの物件候補をそろそろ絞り込み、「決断」しなければなりません。
各物件を中心とした診療圏にどのような世帯・年齢の人が住んでおられるか、そこから導かれる予想来院患者数、収益性などをしっかり把握しておかなくてはなりません。

また、競合する医療機関はあるのか、あった場合にしっかりと今回計画する医院やクリニックは差別化されているのか、なども検討する必要があります。

そして、診療科目によっては、季節などによる理想的な開業のタイミングも存在します。「開業したけれど、患者さんが全然来てくれず、賃貸料や機器のリース料、人件費などの支払いが膨らんできた」という状態にならないよう、スケジュールや予算の調整を慎重に進めてゆかねばなりません。

同時に、内装業者、医療機器などの業者の選定「決断」も始まります。物件契約を行う前に、内装業者に仮図面を引いて、予算を組んでもらったり、必要な機器を「決断」することで、より綿密な事業計画書及び資金計画書が完成することになります。

開業半年~3カ月前

この時期には、検討して来た物件、内装業者、機器、院内処方薬、電子カルテ等システムについて、「決断」・契約を進めると共に、資金計画に合わせた借り入れを行う金融機関も選定「決断」して頂きます。また、同時にスタッフの募集について動き始める時期となります。
この時、同時に考えておかなくてはいけないことは「どのような広告戦略で進めるか」ということです。
ホームページなども含めて、開業前のスタッフ募集の広告に始まり、開業されたことをお知らせする内覧会の広告や看板など、開業当初の来院患者数への影響や、ご近所にお住まいの方々のイメージは、このスタッフ募集の広告から始まると言っても過言ではありません。

開業3カ月前~開業まで

内装や機器のチェックなど、クリニックが「コンセプト通り仕上がっているか」をチェックしつつ、同時に、募集~面接を行ったスタッフの採用・不採用の「決断」、そして、雇用契約や研修もスタートします。

スタッフ雇用の際には、社会保険や福利厚生に関する事など、多くの書類や申請も必要になって参ります。研修や制服の準備も含めて、開業2ヶ月前には、スタッフを確定し、1ヶ月前から研修をスタートするのが理想です。そしてもろもろの行政手続きを終え、内覧会を終えれば、いよいよ開業となります。

開業スケジュールの半年を過ぎると「決断」しなければならない事が次々に現れ、現職で多忙の先生ご自身だけでは手が回らない(比較検討する時間すら無い)状況が発生してきます。
そんな時にこそ、医院やクリニックの根本となるコンセプトをしっかりと理解し、費用対効果のバランスを冷静に判断し、最善の選択肢をご提案するサポートを心掛ける私どもに、どんな些細な事でもご遠慮なくご指示・ご相談頂くようお願いしています。先生のご不安やご心配事を一つずつ着実に解決してゆくことが、私どもの務めだからです。

以上が、概ねテナントの賃貸借からの開業フローとなりますが、「土地をお持ちの場合」または「土地から探される場合」は、少なくとも開業目標の2年前には、まず、お声をかけて頂くのが理想的です。

土地探しから始める場合は流通量が少ないため、診療圏として適応性が高く、周辺環境や通勤方法、時間が適切であり、また外観の雰囲気などのイメージが実現可能だとご判断頂けると、ある程度早期に決定する場合もあります。

建築が、新築の場合、少なくとも建築工事に6~8ヶ月、建築に関する着工前の申請業務に1~2ヶ月、そして計画プランの打合せ、見積の精査、業者の確定に3ヶ月程度は必要になるため、最短でも1年前には既にコンセプトを作り上げておかねばなりません。

スタッフの募集や広告戦略については概ね既に述べたとおりです。

更に時間が必要になるパターンとしては、「自宅併用の医院を建築される」場合です。
建築のプランそのものの打合せや、自宅部分の内容の決定には、更に時間が必要になりますので、医院部分と同時並行して進めたとしても、1年半~2年前には、先生方とコンセプト作りを始めるのが最適です。

ポイントは、先生方が現職を続けながらでも、開業の準備が進められること。そして、何よりご家族の皆さんに、理解し、納得して頂きながら進めてゆける余裕のあるスケジュールを組むことです。

この記事を書いたプロ

大西建設工業株式会社

一級建築士 大西健吾

京都府京都市左京区岡崎東天王町35 ライオンズマンション1階 丸太町通と白川通の交差点「天王町」を北へ約100m [地図]
TEL:075-761-0357

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