コラム

 公開日: 2013-10-03  最終更新日: 2014-07-03

フルハンドメイドオーダースーツならではの「仮縫い」 


そもそも「仮縫い」とは?

スーツ、ジャケットやコートなどををテーラーに「フルハンドメイド」でご注文(オーダー)いただくと必ず「仮縫いの着せ付け」が行われます。

「仮縫い」は、既製品(レディーメイド)は当然のことながら、一般的にオーダーと呼ばれている「パターンオーダー」や「イージーオーダー」にも無い工程です。

お客様(ユーザー)がお気に入りの生地を選んで、店員が採寸するところまでは、パターンオーダーやイージーオーダーそしてフルハンドメイドも同じです。

では、なぜフルハンドメイドのオーダーは仮縫い着せ付けをするのか?
それは、「人間の身体は左右対称ではない」からです。

例えば、顔の真ん中に鏡を立てて見ると、左半分と、右半分の顔とはそれぞれ別人の顔のように映っているのではありませんか。
お解りなるように、顔ですら左右対称になっていないのに身体全体では、左右対称になっているわけがないのです。

それは職業によっては永年身体の一部に負担を掛ける仕事を続けてきたり、スポーツにより肉体を酷使してきた場合など、また年齢に伴う姿勢の変化によって、身体がどちらかにゆがんだり左右、前後のバランスが崩れてきているのです。

左右対称に仕上がっている既製品、パットの厚さや胴回り、着丈、袖丈を修正するだけのイージーオーダー、パターンオーダーでは、身体の捻じれを解消して、身体に沿った着易い服を求めることは難しいのではないでしょうか。

フルハンドメイドでは、まず、デザイン、寸法、シルエットを同じに、基本、左右対称に仕付け糸で「仮のスーツを創ります」

その「仮に仕上がったスーツ」をお客様(ユーザー)に着せ付けて、体型による左右のバランス、前後の傾き、しわ、たるみ、そしてお好みのゆとり量などを確認することが、ハンドメイドならではの真骨頂の「仮縫いを行う」ということなのです。

仮縫い服

スーツの注文(オーダー)はまず、お好みの生地選びから始まります。
数ある着分の生地やパターン見本の中から、お好みの生地を選んでいただきます

その後、デザインやオプション、そのスーツの着用シーン(ビジネス、フォーマルまたはレジャーやダンス)などをお聞きします。



採寸はベテランのテーラー(taiilor:男子服の仕立て屋)が全身の20か所以上のサイズを採寸します。
その際、身体に触れながら、部分的なゆがみやバランス状態を確認しながら採寸しています。

そのサイズを基に、確認したバランス状態の程度、着用シーンなどを考慮して、製図、裁断を行います。
洋服地(スーツなど)は幅が150センチ前後ありますので、それを半分に折りたたんで、その上に型紙を置き、型紙どおりにチャコで描いていくため、左右対称のパーツが出来上がるのです。

左右対称のパーツを「仕付け糸」で縫い合わせて、1着のスーツを作り上げていきます。
これを「仮縫い服」と言います。

※時には、はっきりと左右または前後のバランスがずれていることが解っている場合は、製図裁断の段階でその差をつけることがあります。

仮縫いの着せ付け

左右対称に出来上ったスーツを、お客様(ユーザー)に着用していただきます。
ここからが、テーラーとして最大に神経を集中するところです。

まず、製図どおりのサイズで丈や周りが合っているかを確認。
ゆとりはお客様(ユーザー)のニーズに合っているかをお聞きします。
小さくする場合は待ち針でピン内をし、窮屈な場合は、その箇所の糸をほどいてその分大きくして縫い直します。

左右が異なった場合は左右各々その分だけ、ピン打ちをしたり、解いたりして調整します。

猫背や鳩胸などの場合は、上着そのものをずらしたり、かぶせたりしてその差を測ります。

ゆがみや無駄なシワはピン打ちをしてきれいに見えるように調整します。



私どもでは、仮縫いの時、袖付け部分を外します。
これは、外した袖付け部分から手を中に入れるためです。
それは胸、肩、背とアームホールの状態を見、袖付け周りのゆとり、肩さがりの分量、胸周りと袖付けのコンビネーション、鎌深かの量など確認して、ユーザーに合った適切なゆとりなのかを確認して、より着心地の良い服創りをするためです。

スラックスも同じように、股上、股下寸法はもとより、出尻、平尻、蟹股、などヒップ周りのゆとり、しわ、ひきつれ、折り目線の位置などを確認しています。



ベストについては、胴回りのゆとり、上着を着てボタンを留めた時にベストのボタンの位置、またスラックスのベルトのバックルが出ないように、着丈を調整します。

補正

テーラーとしての腕の見せどころです。
仮縫い着せ付けを済ませてピン打ちしたスーツを、パーツごとに分解します。

ピン打ちした分量を測り、その分量そのものを詰めたり出したりするのではなく、動きに無理のない大きすぎず、窮屈にならない程度のゆとりやバランスなどを考慮してサイズの補正線を引き直します。
この時、左右または前後に差のある場合は、その分左右別々に補正線を引き直します。

大きな修正が必要な時には、型紙にその部分を切り開いたり、畳んだりして「マニプレーション」を施し、出来る限りまっすぐ見えるように、身体に合った、シルエットのきれいな、着心地よい服になるように補正をします。


本縫い

パーツごとの補正線にキリビ付けを打ち直し、それに沿ってベテランの職人が324の工程のほとんどを手縫いとコテ(アイロン)操作で立体的なラインの型崩れしないスーツに仕上げていきます。

以上がハンドメイドテーラ(仕立て屋)の真骨頂です。

ハンドメイドのご注文の流れはこちらにも解説しています

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