コラム

 公開日: 2015-12-30 

坪庭の小さなスペースを活かした自然のある家づくり

京町屋の坪庭

京都のなかでも「京の暮らし」を強く感じさせるのが、軒を連ねた京町屋の風情でしょう。

連なる格子、軒庇、虫籠窓(むしこまど)と呼ばれる窓。しかし、家々はそれぞれの表情を持ち、一律ではない家の並びが独特の情緒を生んでいます。

京町屋は間口が狭く、奥に長いつくりになっています。

一般的な町屋には、玄関から裏庭へ通り抜けるための土間があり、ここを「通り庭」と言います。通り庭の間にも小さな庭がある家があり、これを「坪庭」と言います。

この坪庭が夏の蒸し暑い夏の表の通りとの間に温度差を生み、家の中に風の呼び込むことができました。 

季節を感じる美しい空間

坪庭は建物に囲まれ、狭く、日当たりも悪いため、庭としての条件はよくありません。

しかし、京町屋に住む人々は、そうした悪条件であっても、それに耐えられる植物を選び、四季を感じられる庭をつくり愛しんできました。

樹木は少なく、モミジ、ツバキ、マンリョウなどをいわゆるメインツリーに、石灯籠、筧、手水鉢の配置を工夫して小さな庭に奥行きと表情をそえました。

樹木を少なくしているのは、坪庭が風通しをもたらすための庭であるためです。

また、日本人に愛されてきた苔も重要な植栽の一つでした。苔は半日陰や日陰を好むため、建物に囲まれた坪庭は苔の生育条件にも合います。

樹木の緑と苔の緑色が映え、庭に統一感を与え、美しい空間を生み出します。家の中から坪庭に目をやり、その折々に四季を感じる、京町屋に住む人々は、そのように暮らしの中に自然のある生活を営んできました。

日本人の感性

日本画の特徴のひとつにあげられるものに「空白」があります。

洋画のように画面の隅々まで描きこむことをせず、何も描かれていない部分を大きくとることで奥行きや空間の広がりを生み出しています。

坪庭をつくるにあたって、京町屋の人々もこの「空白」を取り入れました。

坪庭の狭さがそうさせたとも言えますが、余分なものがあったり、互いにその存在を消しあうものが並ぶと、坪庭が生きてこないことを知っていたからです。

研ぎすまし、そぎ落とし、本当に必要なものだけを庭に配置し、狭い空間に「広やかさ」を作り出しました。
あえて「空白」をつくり、そこに豊かな空間を生む日本人の感性がうかがえます。

そして、なにより季節の移り変わりに敏感な日本人の感性、自然を愛しむ感性が京町屋の坪庭には息づいています。

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株式会社ローバー都市建築事務所 京都オフィス [ホームページ]

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