コラム

 公開日: 2013-03-18  最終更新日: 2014-07-03

昭和の名庭 余香苑

 「妙心寺 退蔵院」内にある、庭園「余香苑」は、枯山水庭園「元信の庭」と並び、退蔵院を代表する庭園であり、ミシュラングリーンガイドジャポンでも、二つ星の評価を受けている。「余香苑」は昭和の小堀遠州ともいわれる造園家・中根金作氏の設計により昭和38(1963)年に着工し3年の年月を費やして完成された。もともとは方丈庭園裏の背景となっていた竹林が、寿命を迎え、枯死してしまったため、あたらしく庭園として整備されたものである。

 約790坪もある庭園には、左右にそれぞれ「陽の庭」「陰の庭」と名付けられた枯山水の庭がある。水琴窟のあるつくばいの脇を進み、坂を奥へ下りていくと藤棚付近へたどり着く。そこでふと立ち止まって、後ろを振り返ると、そこには優雅で彩り鮮やかな素晴らしい風景が一面に広がっている。敷地の高低差と奥行きを巧みに利用し、随所に工夫の凝らされたその風景は、まさに「昭和の名庭」の名にふさわしい。

 三段落ちの滝が流れ落ちる、サクラとツツジの大刈込みの間からは、深山の大滝を見るような風情が演出されており、特に滝組石には方丈の枯滝石組の伝統的な手法が盛り込まれている。伝統的な造園手法を基調としながらも、美しい風景を四季を通じて鑑賞できるように四季折々の花が工夫して植えられており、江戸時代までの禅宗の寺院には見られなかった軽妙さが演出されている。

 大本山妙心寺の塔頭として600年の時を経て人々に愛され続ける退蔵院にて、改めて京都の奥深さに触れることのできたひとときであった。

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