コラム

 公開日: 2013-05-14  最終更新日: 2014-07-03

広大で美しい空間 清流亭

 京都市左京区の南禅寺三門。その北西部の広々とした地域一帯は、南禅寺の塔頭(たっちゅう)が明治維新まであった場所である。明治維新以降は有力者の別荘地として人気となり、山荘が次々と建設された。そして、平成のいまでも「野村別邸(碧雲荘)」、「細川別邸」や、松下美術苑の「真々庵」など多くの別荘建築が存在している。

 先日、そんな南禅寺三門の北にある「清流亭」という山荘のひとつを訪れた。大正4年(1915)に東郷平八郎元帥により命名された「清流亭」は、今でも大切に往事の姿がそのままに受け継がれている。約1500坪もの広大な敷地には、大正初期に京都の名工北村捨次郎が手がけた美しい数寄屋建築が立ち並ぶ。優美な入母屋造りの寄付(よりつき)から桧皮ぶき切り妻屋根の端正な正門をくぐると、そこには広大で美しい空間が展開されている。千家伝来の残月亭にならった「残月の間」は書院の格調を高めた趣きのあるものであり、「扇面つなぎの欄間」は京都画壇著名人の筆による絵を扇につなげたものである。このように随所に創意が凝らされた建築空間は美しい庭園と見事に調和し、京都の粋を実に見事に表現している。

 大正時代の天才庭師である「八代目 小川治兵衛」による庭園では、琵琶湖疎水から水を引き入れた「光溢(あふ)れる庭」が創り上げられており、従前の伝統的な侘び・寂びとは一線を画した新しい感覚を、日本庭園に持ち込んでいる。庭の苑内には、白鳳時代に大和高麗寺で建工された十三重の石塔や、智識寺の心礎石、さらには7尺にもなる長さの鞍馬石も据えられている。

 現在は、維持のために非公開であるが、通りから数寄屋造りの表構えや美しい糸桜を眺めるだけでも、一見の価値はある。南禅寺散策のひとときに是非とも訪れてみてはいかがだろうか。

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